薬王山健命寺( 長野県

所在地:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷
彫師:越後市振 北村喜代松
彫物製作年代:明治19年 1886年

野沢温泉の東側の山腹に建つ曹洞宗の古刹。天正12年(1584)僧南室正舜(そうなんしつせいしゅん)の開基創建といわれ、本尊は伝聖徳太子作の薬師如来像。境内には本堂のほか山門、経蔵(薬師堂)、庫裏、鐘桜などが建っている。二層秀麗は薬師堂(経蔵)にまつられた薬師瑠璃光如来は上杉謙信の陣中守り本尊だったといわれている。
 健命寺は野沢菜発祥の地として知られている。八代住職晃天園瑞が宝暦6年(1756)に京都遊学のさい、天王寺蕪の種を買い求めて帰り、蒔いたところ高寒冷地のため葉と茎が伸び独特の蕪菜ができ、これが野沢菜となった。今でも健命寺産の原種は江戸時代の農耕方法で栽培されており、山門前には「野沢菜発祥の地碑」「園瑞彰徳碑」が並立している。

薬師堂(経蔵)の向拝の彫物は、北村喜代松の作。喜代松は越後市振(現、新潟県青海町市振)の出身。北信、富山、上越にたくさんの作品を残している。健命寺経蔵は、喜代松57歳の時のもので、もっとも脂の乗り切った時の作品だ。喜代松の師匠は不明だが、独特の意匠だと思う。龍は精緻であり迫力に満ちている。特に中央の親龍は正面から見ると少し左に向いている。少し左側に寄って見ると、顔全体が少しデフォルメされている。どこから見ても立体的に見える。獅子も喜代松独特のデザインだと思う。そのほか、鷹、仙人、亀、二十四孝など経蔵には様々な彫物が施されている。本堂は後藤政綱、隣接する湯沢神社は、越後の岩崎嘉市良重則の作によるものだ。
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